でんげきしょう

電撃傷

電撃傷はどのようなキズですか?

 生体内に強い電流が入り、出ていくときに生じるキズのことです。キズができる仕組みや外観は熱傷(ねっしょう:やけどのこと)に似ていますが、少し異なる点もあります。また、電流と接した皮膚以外の臓器にも症状が現れることがあります。

電撃傷にはどのような症状がありますか?

 重要な症状は、電流が臓器を流れることによって起こるものです。脳や心臓に流れたときは、重い症状が現れる可能性があり、その場で心肺停止になることもあります。受傷直後は問題がなくても、後に症状が出現したり、後遺症が残ったりすることがあるので、注意が必要です。

 外から見て確認できる分かりやすい症状は、熱傷のようなキズです。これには

  1. 電流が流れることで生体そのものに発生する熱(ジュール熱)によるキズ
  2. 高圧電流に近づくことで生じる放電(アーク放電)によるキズ
  3. 放電で発生した炎が衣服などに着火して生じるキズ

といった要因が関係しています。

電撃傷のときはどのようにすればいいですか?

 意識消失がある場合は、救急車などですぐに医療機関を受診しなくてはいけません。意識がはっきりしていても、電流が体内のどこを流れたかは判断が難しく、少し遅れてから重い症状が出現することもありますので、できるだけ速やかに医療機関を受診してください。

 強い電流が体内に入ってきた部位と出ていった部位には、熱傷のようなキズが生じます。このキズの診療には専門的な知識を要しますので、早い段階で形成外科などの専門診療科を受診することをお勧めします。

電撃傷のキズにはどのような特徴がありますか?

 ある程度以上の強さの電流の出入り口となった部位の皮膚には、たいてい熱傷のようなキズが生じます。

 キズの重症度は流れた電流の強さで決まりますが、皮下にある見えない部分にも電流が流れて損傷されるため、見た目以上に深くて重症なことがあります。また、皮下にある血管が損傷された結果、その部位の血行が失われ、時間経過とともに壊死(えし:生体組織が腐ること)が進行していくことがあります。さらに、壊死した組織が多いと、受傷後しばらく経ってからそこに細菌の感染(かんせん:化膿すること)が生じることもあります。治療する際は、経過を丁寧に観察しながら、状態に応じた治療法を選択していきます。

 このように電撃傷のキズは、受傷時にはその後の経過の予測が難しく、経過に応じた治療を選択していかなくてはいけないことが特徴です。はじめは軽いキズだったのが、次第に悪化していき、大きな手術を要することもありますので、決して患者さん自身で手当てをせず、はじめから専門的な治療を受けるようにしてください。

左環指電撃傷

トラックの整備中に、左手の環指(かんし:薬指のこと)の指輪がバッテリーに触れて感電しました。
左環指の指輪をはめていた部位に、全周にわたる指輪型のキズが見られます。

文責:
名古屋大学
大学院医学系研究科
形成外科学
 准教授 橋川 和信

名古屋大学 大学院医学系研究科 形成外科学 准教授 橋川 和信

2022年4月19日掲載