じょくそう

褥瘡(床ずれ)

褥瘡(床ずれ)ってどんなキズ?

体重で圧迫されている場所の血流がわるくなったり滞ったりすることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、キズができてしまうことです。『床ずれ』といわれるように、床(ふとん)とのずれる力でできることもあります。

本来そのような酸素不足がおきると痛いので、普通の人は寝返りをうったり身体の位置を変えたりして、そこまで組織が傷むことはありません。従って、痛みを感じない人や痛くても動けない、寝たきりの人に生じることが多いです。また、体力が落ちている人は栄養状態も悪く、抵抗力も弱っているため、よりできやすくなります。

褥瘡はどんな人にできるの?

上記のように、痛みを感じない人や痛くても動けない人に生じることが多いです。

  • 麻痺があって自分で身体を動かせない人
  • 衰弱していて自分で身体を動かせない人
  • 意識を失っていて自分で身体を動かせない人:手術などで麻酔がかかっている状態も含まれます

仰向けで寝ている姿勢の時には、仙骨部といわれるお尻の出っ張りの部分や尾てい骨、背骨、踵、後頭部などにできることが多いです。下半身麻痺で車いすなど長時間座っている姿勢の時には、座骨と言われるお尻の部分にできることが多いです。意識を失って長時間横向きに倒れていた場合には、腰骨や頬骨のところにできることもあります。

  • 生まれつき足の感覚が鈍い人(二分脊椎など)
  • 糖尿病の合併症で足の感覚が鈍い人

このような人は足にできることが多く、踵や外くるぶしなどにできることが多いです。

褥瘡ができたらどうすればいい?

訪問看護や訪問診療を利用している方はまずそちらに連絡しましょう。慌てる必要はありませんが、気づいた時点で実はできてから時間がたっていることもありますし、早めに対応した方がキズの治りも早くなります。

褥瘡の予防

褥瘡は予防できる病気です。圧迫やずれが原因ですので、それを避けるようにするのが第一です。圧迫されやすい、『好発部位』(図)がありますので、特にそれを知った上で除圧を意識すると良いでしょう。また、オムツなどでの蒸れも皮膚損傷の原因になりますので注意が必要です。それから、早期発見も大事です。そのためにも毎日皮膚を観察することが大事です。

図1 図2

図 褥瘡好発部位

褥瘡の治療

褥瘡は一般的なケガとは違います。その人にとって普通に生活していただけで組織が腐ってくるのですから、異常事態です。

一方で、人間の身体には、キズを治そうとする力が備わっています。組織が傷むような環境を脱して、キズを治す力を引き出す環境にすることが、治療になります。

褥瘡の場合、表面から見えないところが傷んでしまっていることもあります。病院を受診したのに、あるいは先生に診てもらったのにその後から組織が傷んでくるように見えることもありますが、基本的には傷んでいたのが明らかになってくるだけで、既に回復不能な状態に陥っていたことが露わになっただけです。

◎全身状態を整える。栄養状態が悪い、脱水、貧血、基礎疾患、などは身体全体を弱らせます。全身状態を整えるのが大前提となります。

◎局所の状態を整える。予防とも重なりますが、圧迫やずれは除去します。褥瘡になった原因が取り除かれることで、悪化をとめます。

  • 感染などを起こしている場合には、膿を出すような切開が必要になることもあります。悪化がとまり、感染が落ち着くと、治す治療に進めます。

治す治療

  • 壊死組織(くさってしまった組織)、活性化の悪い組織、の除去=『デブリードマン』
  • 毎日の洗浄処置
  • 適切な水分環境(ふやけすぎず、乾燥しすぎず)になるように軟膏や吸水パッドなどを用いて環境を保つようにします。

特殊な治療

症例は限られますが、状況によっては、手術を行った方が治るのが早いと判断されて手術を行ったり、キズの治りを早める特殊な器械を装着する治療が選択されることもあります。

文責:
筑波大学医学医療系形成外科
 講師
 相原 有希子

筑波大学医学医療系形成外科 講師 相原有希子

2023年11月9日掲載