かんにゅうそう・まきづめ

陥入爪・巻き爪

陥入爪と巻き爪の違いは?

陥入爪は、爪の端が周囲の皮膚に食い込んで炎症を起こしている状態です。一方、巻き爪(弯曲爪)は、爪の端が内側に巻いている爪の変形です(図1)。陥入爪と巻き爪は厳密には別の疾患ですが、巻き爪が陥入爪を起こす原因となる場合、あるいはその逆もあり、治療法や予防法にも共通する点があります。

ここでは、陥入爪と巻き爪の各々について詳しく説明します。

図1
  • 陥入爪
  • 巻き爪

図1

陥入爪について

1. 症状は

爪の端が周りの皮膚に食い込んで炎症を起こしている状態です。痛みや腫れを生じ、さらに、皮膚にできたキズが感染を起こし、化膿したり、不良肉芽(ふりょうにくげ)ができたりします。

2. 原因は

足の親指に起こることが多く、主な原因は、まちがった爪切りによる深爪や、合わない靴や圧迫の強い靴下などの着用による爪の圧迫とされています。また、オーバーサイズネイル(幅広い爪)、巻き爪といった爪の変形、扁平足や外反母趾などの足変形、足のむくみ、それから、爪白鮮(爪の水虫)が原因となることがあるので、水虫のチェックも必要なことがあります。

3. 予防法は

1) 圧迫を避ける
フットウェアの選択、調整をして爪が強く圧迫されないようにします。
2) 正しい爪切り
爪の長さは、指先と同じくらいにそろえ、全体的な形は、角に少し丸みのある四角形に整えるようにします(スクエアオフカット)(図 )。
図2
  • ①指先と同じ位の長さで爪の上部を一直線に切る
  • ②爪先のカーブに合わせ爪ヤスリで角を丸く削る
  • ③スクエアオフカット完成

図2 スクエアオフカット

3) フットケア(足のお手入れ)
皮膚のキズや感染を防ぐために、衛生的にきちんと洗い、保湿を心がけます。

4. 治療法は

保存的治療と外科的治療(根治手術)がありますが、短期間での治療を希望される場合や、保存的治療が無効あるいは再発を繰り返すような場合に形成外科で手術を行います。

1) 保存的治療
爪の端と皮膚が接する部分の保護法と、矯正具による爪矯正法があります。

 治療に使用する材料によっては保険適用外の治療(*)となることがありますので、詳しくは担当医の先生にお聞きください。
A. 保護法(爪が皮膚に食い込まないように保護して炎症を取る方法)(図3)
  • 肉芽除去
  • 爪甲(爪棘)部分切除
  • テーピング法
  • コットンパッキング法
  • ガター法(チューブ)
  • アクリル人工爪法*
など
図3
  • テーピング法 
  • コットン
    パッキング法
  • ガター法
    (チューブ)

図3 保護法

B. 爪矯正法(爪の弯曲を平らにする方法)(図4)
  • ワイヤー法*
  • クリップ法*
  • プレート法*
  • 爪甲剥削法
  • 爪甲軟化法*
  • 爪アイロン法*
など
図4
  • ワイヤー法
  • クリップ法
  • プレート法

図4 爪矯正法

2) 外科的治療(根治手術)(図5)
陥入している爪の端と爪母(爪を作り出す組織)を除去することによって、爪の幅を狭くして、変形や食い込み部分をなくす根治的治療です。様々な手術方法がありますが、最近では、より侵襲の少ないフェノール法が広く行われています。指の局所麻酔による日帰り手術で、手術直後から歩行できます。
  • フェノール法
  • 楔状切除法(鬼塚法、小島法など)
図5 陥入爪の手術
  • フェノール法
  • 楔状切除法

図5 陥入爪の手術

巻き爪(弯曲爪)について

1. 症状は

爪の端が内側に巻いている爪の変形です。爪の変形だけではなく、爪の下の骨にも突出や骨棘などの変形を伴っていることがあります。多くは足の親指に生じますが、そのほかの足や手の指にも生じることがあります。歩行時や運動時に、爪の先端部分が圧迫されて、足の指先に痛みを生じたり、爪の下に血腫を生じたりすることがあります。一方で、爪が強く弯曲していても痛みが全くないこともありますが、爪の弯曲が強く厚くなると爪切りが難しくなり、爪が突出すると靴や靴下を履くのが難しくなるため、生活に支障が出ることがあります。また、巻いた爪の端が皮膚に食い込んで陥入爪の原因となることもあります。

2. 原因は

先のとがった靴などによって、爪が横方向から圧迫されることが主な原因とされています。一方で、巻き爪は、足の指に力のかからない寝たきりや車椅子の方、足に麻痺がある方にもよく見られます。本来、足の指の爪は歩行時に下からの力を受けることによって、なだらかなアーチ形に保たれています。この力が不足すると、爪は丸まってしまうと考えられています。このため、足の痛みや変形(タコ、ウオノメ、扁平足、外反母趾など)、爪の疾患(爪白癬、陥入爪など)により、足の指を地面につけずに歩く、いわゆる「浮き指」状態になっていると巻き爪を起こしてしまいます。そのほかにも、薬の副作用や遺伝的要素も影響していると考えられています。

3. 予防法は

1) 圧迫を避ける
フットウェアの選択や調整をして、爪が強く圧迫されないようにします。
2) 正しい歩行
足の指に適度な力が伝わるように、正しい歩き方をしましょう。足の形に合った靴を選び、インソールなどで足の骨格の歪みやバランスを調整することも予防につながります。
3) 正しい歩行を妨げる原因となる疾患の治療
まずは、足の痛みや変形、爪の変形の原因となる病気の治療を行い、原因を排除します。

4. 治療法は

1) 保存的治療
巻き爪の治療は保存的治療が基本です。痛みがなく、生活に支障がなければ、必ずしも治療をする必要はありませんが、爪切りには注意が必要です。痛みがあれば、保護法で痛みを軽減させ、爪の変形に対しては、矯正法で改善させます。方法は陥入爪の場合と同様です。ただし、装着中あるいは治療した部分の爪にしか効果がなく、新たに生えてくる爪では再発することが多いのが問題です。

 治療に使用する材料によっては保険適用外の治療(*)となることがありますので、詳しくは担当医の先生にお聞きください。
A. 保護法(爪が皮膚を圧迫しないように保護して痛みを取る方法)(図3)
  • テーピング法
  • コットンパッキング法
  • ガター法(チューブ)
  • アクリル人工爪法*
など
B. 爪矯正法(爪の弯曲を平らにする方法)(図4)
  • ワイヤー法*
  • クリップ法*
  • プレート法*
  • 爪甲剥削法
  • 爪甲軟化法*
  • 爪アイロン法*
など
C. 爪切りについての注意
変形し、厚みのある爪のケアには、ニッパーやヤスリの使用が便利です。
爪の先端が引っかからないようにこまめに爪切りすることが勧められますが、深爪や爪の切り残し(爪棘)を避け、周りの皮膚を傷つけないよう注意が必要です。爪切りが難しい場合には、無理をせず医療機関に相談しましょう。
2) 外科的治療(根治手術)
巻き爪の手術は、変形した爪を除去し、爪の下面にある爪床と呼ばれる組織を平らに戻して、新しい爪が平らに生えそろうように誘導するものです。爪の下にある骨が突出していれば、削り取ります。剥がした爪を戻す方法もあります。

 症状が短期間で治るのが利点ですが、手術終了後、新しい爪が生えそろって結果が出るまで少なくとも半年はかかります。手術の適応については形成外科で相談しましょう。
  • 全抜爪を行う方法
  • 爪を残す方法(図6)
など
図6 巻き爪の手術(爪を残す方法)

図6 巻き爪の手術(爪を残す方法)

文責:
帝京大学医学部
形成・口腔顎顔面外科学講座
 病院准教授 堂後 京子

帝京大学医学部 形成・口腔顎顔面外科学講座 病院准教授 堂後 京子

2023年11月9日掲載