とうしょう

凍傷

凍傷はどのようなキズですか?

 皮膚が強い寒冷にさらされたために組織障害を起こした状態です。凍結による直接的な組織障害と循環不全に伴う二次的な組織障害により起こるとされます。冬山登山、アルコールによる泥酔、職業災害などにより生じます。組織障害を伴わない炎症である凍瘡(しもやけ)とは異なります。

凍傷にはどのような症状がありますか?

 指、足趾、耳、鼻などによく生じます。凍傷の深さはI度、Ⅱ度、Ⅲ度の3段階に分類されます。Ⅰ度は表皮(皮膚の表層)のみの障害であり、発赤、腫脹、加温すると痛みを認めます。Ⅱ度は真皮(皮膚の深層)までの障害であり、水疱(水ぶくれ)形成を認めます。Ⅲ度は脂肪、筋肉、骨におよぶ障害であり、血性水疱、潰瘍(かいよう)形成、黒色に壊死(えし)した皮膚を認めます。どの深さまで凍傷が起きているか、受傷時に判断することは難しく、日数を要することがあります。

凍傷のときはどのようにすればいいですか?

 凍傷を負った人は低体温症になっている可能性もあるため、温かい毛布などにくるみ、できるだけ速やかに医療機関を受診してください。緩徐な融解は組織障害を大きくし、搬送中の再凍結は凍傷を悪化させます。患部を温めようとして、こすると組織のさらなる損傷につながるため、こすらないようにします。ドライヤーなどの乾熱で温めることは、組織を乾燥させる上、温度の設定が不適切となるため行ってはいけません。

凍傷にはどのような治療がありますか?

急速融解法
 最初にすべき治療であり、約40℃の温水に患部を入れて、患部が融解されるまで30分程度温めます。融解中は、激しい痛みを伴います。融解中に患部をマッサージしてはいけません。体温が35℃以下の低体温症の場合は、四肢から先に温めると低体温を助長する場合があるので注意を要します。

保存的治療
 Ⅱ度以上の凍傷は、患部の融解後に熱傷(やけど)や皮膚潰瘍の治療に準じた処置が必要です。患部の融解後に生じる進行性の組織障害を最小限にするため、血管拡張薬の投与や交感神経ブロック、高気圧酸素療法などによる末梢血流の改善が行われることもあります。

外科的治療
 Ⅱ度以上の凍傷は、手術が必要になることがあります。肉眼的に組織が壊死した境界がはっきりする受傷後3週以降に行われることが多いです。

A
冬山登山の下山翌日に初診された時の足先の状態です。水疱を認め、Ⅱ度凍傷と診断しました。軟膏による処置を開始しました。
B
初診後6日目の状態です。翌日から外来通院での高気圧酸素療法を10回行いました。
C
初診後32日目に治癒した状態です。

図.足趾凍傷の症例

文責:
北海道大学
大学院医学研究院
形成外科学教室
 助教 石川 耕資

北海道大学 大学院医学研究院 形成外科学教室 助教 石川 耕資

2022年4月19日掲載